Gibson SJ-200 Standard

Guitar,MusicGear

購入年月日2021年12月26日
購入価格¥398,000
購入場所イシバシ楽器 (名古屋栄店)


人生の節目に

「キング・オブ・フラットトップ」…17インチのジャンボ・ボディー、フレイムメイプルのサイドバック、花柄が目を引くピックガード、ムスタッシュ(口髭)の別名を持つ独特のブリッジ、クラウン型のインレイ・・・何から何まで豪華絢爛。まさに「キング」の名にふさわしい佇まいのギターだ。それゆえ価格も王様級である。
でも僕にとっては夢のギターってほどでもなかった。興味を持ったのはここ1年くらい。それまでは正直眼中にもなかった。

僕ももう齢50を過ぎた。この先満足にギターが弾ける期間なんて20年くらいしかないかもしれない。次にギターを買うことがあるとしたらきっとそれが最後の1本になる。そんなことを漠然と考えていた。

ジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」の宅録をしながら、きっとこの曲をJ-200で弾いたら気持ちいいだろうな、とか。「ヒア・カムズ・ザ・サン」をこれで弾いてみたいな、とか。そんな妄想を抱いているうちにだんだんこのギターが欲しくなってきた。

いつもの悪い癖だ(笑)。

そんな折、会社で仕事の配置換えがあった。
入社以来28年に渡って務めてきた設計の仕事から離れることになったのだ。僕にとっては大転換だ。
で、よくある「自分をねぎらう」という理由付けでこのギターを買おうと心を決めた。というかそれを自分の物欲を正当化するために使わせてもらった、というのが正しいか(笑)。

中古品

心を決めるのはこちらの勝手だがなにせ高価な品物。その上あまり市場に出てこない。異動が決まった11月の下旬から楽器情報サイトの「デジマート」でちょこちょこ探し始めたがなかなか「これ」というのが出てこない。人気モデルのせいか「出た」と思ってもあっという間に売れてしまう。

新品は昨今の不健全な円安のせいか500,000円を超える値段がつくようになった。ギブソンのギターは個体差が大きいという印象があるし、酷いものはピックガードが浮いてきたりトップコートが剥がれたりということもあるらしい。そうなると新品は逆に怖い。ある程度年数の経った中古品の方が安心なのかもしれない。新品を買うよりも値段も安価だろう。ただし中古品は「1点もの」なのでいいものに巡り合うのは難しい。

社内で異動の通知が出た翌日の土曜の深夜、デジマートに1本の中古品が登録された。
23:00くらい。普段ならとっくに寝ている時間だ。起きていることは珍しい。

2018年製。カラーはビンテージサンバースト。フレット残8割、トラスロッド余裕あり、大きな損傷なし、弦高低め、ピックアップ付き。思わずその場で即ポチってしまいそうな個体だった。

しかしさすがに400,000円クラスの生楽器を現物を見もせずに買うことはできない。

店舗は名古屋の栄。行けそうな場所だ。
デジマート経由で店にメール。もう夜中なので当然返信はない。

名古屋へ

メールを送った翌日の日曜日。昼前に店から「取り置きします」と返信があった。
あの時間に起きていたからこその展開。これはきっと導きだと勝手に確信して昼過ぎに名古屋に向かうことにした。

パンデミック以降は長距離の移動は車のみ。電車にはまったく乗らなくなった。しかし栄となると車は厄介だ。絶対渋滞してるだろうし土地勘もないしなにせあの「名古屋」だ。車は無理。
ということで久しぶりに電車に乗ることにした。最後に新幹線に乗ったのは昨年の1月だったからおよそ2年ぶり。

数年に一度の寒波到来で寒い。雪がちらついている。名古屋以西は結構な降雪になっているようで新幹線のダイヤは乱れ気味とのこと。

オミクロン爆発の兆候はあれど感染者数は一時期に比べたら桁外れに少ない。年末であることも手伝って名古屋駅、地下鉄はかなりの人出だった。さすがにちょっと恐怖を覚えた。

約束の時間から30分ほど遅れて店舗に到着。
目の前のSJ-200には「売約済み」の紙が弦に挟んであった。まだ買うと決めたわけじゃないんだけど…いや、ほぼ決まってるか(笑)。

ほぼ新品

ちょっとがっかりした。覚悟はしていたけどやっぱりサンバーストの色が暗い。2018年に買ったJ-160Eもこんな感じだった。美しくない。もっとコントラストつけて欲しいんだけど最近のギブソンのアコギのサンバーストはみんなこうだ。

手にとってみる。傷は少ないというかほぼ無い。思った以上にきれいな個体だった。塗装が薄いのかウェザーチェックが入っているがそれがまたいい感じ。SJ-200にありがちだとされているピックガードの浮きもない。

鳴らしてみると想像以上に大きな音が出た。
張られている弦が新品のフォスファーブロンズなので高音がきらびやかなのは当然として低音も豊か。「ズドン」ってほどじゃないけど「ズン」とはくる感じで全体のバランスがいい。SJ-200を弾いたのは生まれて初めてで他の個体との差はわからないが「SJ-200は鳴らない」というのが定説になっているほど「鳴らない」ギターでアタリの個体は少ないとされている。これも決して「アタリ」じゃないのかもしれない。購入前提だと試奏時にはバイアスがかかるものだがそれを差し引いても悪くない。いや、かなりいいじゃないか。

弦高は低めギリギリの調整になっていて単音を鳴らした時に10フレット辺りがちょっと危ないかもと思ったんだが結局全弦全フレット音詰まりは無いしストロークしてもビビることのない絶妙な高さ。なにせ低いのともて弾きやすい。

いったい前オーナーさんは何が不満でこんな良個体を手放したんだろう?「状態もいいですし、ほぼ新品ですよね…」と店員さんも不思議そうな顔をされていた。同梱されているストラップもクロス使った痕跡がない。弾くよりも見て楽しんでいたクチだろうか…世の中いろんな人がいるもんだ。

家に持ち帰って弾いてみる。やっぱり気持ちいい。
しげしげと眺めているだけでも思わずにやけてしまうほど美しい。比喩じゃなくてほんとに酒の肴になる。ギターを見ながらワインを飲んだのは生まれて初めてだ(笑)。

いい買い物ができた。


宅録使用曲一覧