RUBBER SOUL – THE BEATLES

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Side A

  1. Drive My Car
  2. Norwegian Wood (This bird has flown) ノルウェーの森
  3. You Won’t See Me
  4. Nowhere Man ひとりぼっちのあいつ
  5. Think For Yourself 嘘つき女
  6. The Word 愛のことば
  7. Michelle

Side B

  1. What Goes On 消えた恋
  2. Girl
  3. I’m Looking Through You 君はいずこへ
  4. In My Life
  5. Wait
  6. If I Needed Someone 恋をするなら
  7. Run For Your Life 浮気女

宅録総括&全曲連続再生


 

独自性と多様性

1965年12月3日にリリースされたビートルズ6枚目のオリジナル・アルバム。
バンドは相変わらず多忙を極め、65年のクリスマスに向けたこの作品の録音に費やされた期間は4週間程度と非常に短いものであったにも関わらず、収録された曲は歌詞・楽曲・アレンジ全ての面においてこれまでの作品とは全く別次元のもので芸術的に大きな進化を遂げている。このアルバム以前のビートルズサウンド、いわゆるマージービート的サウンドから後の多様性を持ち洗練されたポップ/ロックへと変化を遂げるターニング・ポイントとなった作品であり、ロックを新たな次元に引き上げたアルバムとして世間的な評価も非常に高く、ロック&ポップスの歴史において最も偉大なアルバムの1つに挙げられている。

この時期、ビートルズとプロデューサーのジョージ・マーティンは従来のロック・バンドの枠から抜け出そうとしていた。
ノルウェーの森」ではインドの弦楽器シタールを、「ミッシェル」、「ガール」ではギリシャ風のギターラインを、「嘘つき女」でファズ・ベースを、そして「イン・マイ・ライフ」ではテープ操作でハープシコード風な音にしたピアノソロを使用。バンド楽器にとらわれない音作りを試み、これが功を奏している。

バーズのデビッド・クロスビーにインドの歴史的音楽とシタールを紹介されたジョージ・ハリスンはすぐにこの音楽の虜になり、シタールのレッスンを高名なインドのシタール演奏の巨匠ラヴィ・シャンカルから受けるようになった。ジョン・レノンが「ノルウェーの森」のアレンジで悩んでいた時に「弾いてみるか?」と言われて音を探しながら録音したとジョージは語っている。この曲は「ワールドミュージック」と呼ばれる分野の先駆けの一つとして認識されていて、西洋の音楽の中に西洋ではない音楽の影響を入れるトレンドの歴史的なきっかけとなった。

パーカッション類ではタンバリンやマラカスが「ドライブ・マイ・カー」、「ウェイト」、「嘘つき女」といった曲で効果的に用いられており曲のイメージ作りにこれまで以上に多大に寄与している。このアルバムでリンゴ・スターが使った最も変わった打楽器は「君はいずこへ」で聞くことができる。「これは極秘事項なんだけど」という注釈つきで彼が明かしたところによれば、これは彼がマッチ箱を指で叩いて作られた音なのだそうだ。

「イン・マイ・ライフ」のレコーディングでは録音・ミキシング技術の革新があった。この曲のキーボード・ソロはハープシコードのように聞こえるが実際に演奏しているのはピアノである。ジョージ・マーティンはこのバロック調のフレーズを思いついたものの曲のテンポに合わせて弾けないことが分かったのでテープ速度を半分にして録音してみた。ミックスダウン時に普通のスピードにして聞いてみると、スピードを上げた音はハープシコードのような音となった。また「愛のことば」ではピアノをコンプレッサー+イコライザーにかけておよそピアノらしくないサウンドに変化させている。この特有のエフェクトはすぐにサイケデリック・ミュージックにおいて非常によく使われるようになった。

アルバム・タイトルは本場のブルースマンがローリング・ストーンズを揶揄した「プラスティック(まがい物の)・ソウル」という言葉からポール・マッカートニーが考案したもの。ジョンも1970年のローリング・ストーン誌からのインタビューでタイトルはEnglish Soulの意味だとしながらもポールがPlastic soulとつぶやいていた事実を認めている (アンソロジー2の「アイム・ダウン」の最後にこのつぶやきが収録されている)。

ジャケットはジョンの家で写真家のロバート・フリーマンによって撮影された。フリーマンは撮影後アルバム程度の大きさがあるボール紙へ写真を投射してメンバーにアルバムカバーがどんな感じになるかを見せていた。その時にボール紙が少し後ろに傾いてしまった。ボール紙の傾きと共に奥側に歪んで投影された写真を見てメンバーは「これだ!」「そういう風にできないかい?」と叫んでいた。

タイトル文字のレタリングはチャールズ・フロントのデザインによるもなのだが、複数の色バリエーションが世に出ている。パーロフォン盤ではオレンジでこれが公式だがキャピトル・レコードはアメリカ盤に色の彩度が違うものを使っている。一部のキャピトル盤LPではタイトルがチョコレートブラウンであり、他にゴールドに近い色もあった。1987年のイギリス盤公式CD化においてもキャピトルのロゴは確認でき、文字の色は茶色でも公式なオレンジでもなく、全く違う緑色である。
 

なんだこのギャップ

前作「ヘルプ!」はやや残念なアルバムだった。
いい曲もあったけど総じて退屈で隙だらけ。穴埋め曲だけでアルバム作りましたみたいな感じだった。

ところがこの「ラバー・ソウル」は全然違う。
完璧だ。傑作すぎる。

「ヘルプ!」のセッションが終わってから「ラバー・ソウル」に着手するまでほとんど時間差がなかった。それなのになんでこれほどまでに曲の質が変わるんだ。
しかも今回はカバー曲がない。全部オリジナル作品。
「ドライブ・マイ・カー」「ノルウェーの森」「ユー・ウォント・シー・ミー」「ひとりぼっちのあいつ」「愛のことば」「ミッシェル」「ガール」「イン・マイ・ライフ」「恋をするなら」。
このあたりはシングル盤で出してもいいんじゃないのくらいデキがいい。

楽器の音も急に変わった。
ギターはこれまでのリッケンバッカーとかグレッチだったが、ジョンもジョージもフェンダーのストラトキャスターを手に入れてこれを頻繁に使い始めた。ポールのベースはホローボディーのヘフナーからリッケンバッカーのソリッドベースがメインになった。しかしステージではポール頑なにヘフナーを使っていたし、ジョンとジョージもストラト持ってステージに立つことはなかった。多分これまでのイメージを守ろうとしたんだろう。

ベース、といえばこのアルバムのポールのベースは秀逸だ。前作「ヘルプ!」までのテンションの低さが信じられないくらい自由に、しかしツボを押さえた名演奏を聴かせてくれる。「嘘つき女」ではベースにファズをかけるという暴挙に出てこれが実に見事にハマった。「ドライブ・マイ・カー」「ユー・ウォント・シー・ミー」「ひとりぼっちのあいつ」「愛のことば」「ミッシェル」「恋をするなら」も素晴らしいライン。新しい楽器を手に入れてハイになってたのかな(笑)。

収録曲は総じて秀作が多いが、残念な曲もある。「消えた恋」「君はいずこへ」「ウェイト」「浮気娘」がそれだ。しかしわずか4週間ほどのセッションであったことを考えれば、ヒット率としては申し分ない。

本気で本当の秀作揃いのアルバムは、この次にやってくる。
 


いいね!

  • Drive My Car
  • Norwegian Wood
  • Nowhere Man
  • Think For Yourself
  • The Word
  • Michelle
  • Girl
  • In My Life
  • If I Needed Someone

よくないね!

  • What Goes On
  • Wait
  • Run For Your Life

 


更新履歴:

2016.05.31 リミックス&動画化終了 (version 2.1)
2016.04.11 動画製作のついでにversion 2のリミックス・再録開始 (version 2.1)
2011.08.21 version 2.0録音終了
2011.07.18 version 2.0録音再開
2011.06.20 version 2.0録音休止
2011.06.01 version 2.0録音開始
2002.11.26 version 1.0録音終了→CD作成
2002.11.24 version 1.0録音開始


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