宅録ビートルズ・2周目 – RUBBER SOUL総括
2011年6月1日に着手して8月21日に完成。
日数計算上は82日だが宅録日記ナンバーは070~083なので録音に要した日数は14日ってことになってるけどこの時期の日記はまとめ書きしてるので実際はもっとかかってたはず。
2016年4月~5月、動画製作のついでに13日間リミックス作業(一部パートの再録音を含む)をした。
仕上がったので、振り返り。
思ったよりも素朴
1965年後半。デビューしてから3年足らずでビートルズはそれまでのライブパフォーマンスからスタジオレコーディングに重きを置くようになっていく。このアルバムはその入口というかターニングポイントとして語られることが多い。実際シタールを使ってみたりピアノを倍速でプレイバックしてスーパーインポーズしたり、これまでよりも凝った編曲の曲もある。
ただそういう「変化球」はまだ少ない。この後に続く3枚のアルバムがとんでもなく凝りまくってるのでそのイメージもあって身構えてたんだけど、実際やってみると楽器編成も演奏も意外にシンプルだった。苦労したのはI’m Looking Through YouのキーボードとIn My Lifeのギターの音作りくらい。Nowhere ManのリードギターとThink For Yourselfのファズベースもこれまでにない音だったけどさほど特殊でもない。
曲としての質はこれまでのアルバムとは比べ物にならないほどレベルが上がっているのに演奏はまだまだシンプル。あらためて素晴らしいアルバムだと思った。
楽器の変化
ジョン・レノンのRickenbacker 325とポール・マッカートニーのHofner 500/1。
ビートルズのフロントラインの2人にとってアイコンともいうべき楽器だったが、1965年秋に始まったこのアルバムのセッションからこれらを一切使わなくなってしまった。
ジョンはFender Stratocasterに、ポールはRickenbacker 4001Sに、それぞれメインの楽器を持ち替えた。
ジョージ・ハリスンもジョンと同じストラトキャスターを手に入れてこのアルバムではこの新しいギターを頻繁に使っていたようだが、これまで愛用していたGretschとかRickenbackerの12弦も弾いてる。曲に合わせて最適な音を、ってとこなのかな?この辺はさすがこだわるジョージだなぁと思った。
楽器が変わると曲のイメージも変わってくる。
特にホローボディーでディケイの短いHofnerからサスティーンの長いRickenbackerに持ち替えたポールのベース音の変化が曲に与えた影響は劇的なものだった。
僕もRickenbackerで録音した。演奏しやすいってのもそうなんだけど、ミキシングするときもHofnerに比べて格段に処理しやすかった。
ただしポールがこのベースを使ったのはスタジオだけ。ライブやテレビではあくまでHofner。実際にRickenbackerをカメラの前で弾くことはまだ無かった。
僕はビデオ用の動画を撮る時にはたとえマイムであっても基本的には録音で使った楽器を持っている。だからこのアルバムのベースの画はRickenbackerになる。例外は原曲で唯一のHofnerだったと思しきWaitと、1966年の武道館のステージをイメージして作ったIf I Needed Someoneだけ。
Rickenbackerのベースの画をYouTubeに上げると「このアルバムではポールはヘフナー」という「ビートルマニア」からの口撃が飛んできた。
まぁどう思おうがあなたの勝手だし、僕も見たわけじゃないから本当のことなんて知らないよ。音を聴いてそう思っただけ。
ところがこの「マニア」が曲をアップする度に「ヘフナー」「ヘフナー」ってうるさい。
目障りなのでブロックした。
Motionでエフェクト自作
動画は相変わらずFinalCutで作ってる。LET IT BEの時にグリーンスクリーンのクロマキー合成を覚えて動画作りの幅は格段に広がったんだけど、数をこなしていくとどうしても似たパターンのもの多くなってくる。素材のクリップにかけるエフェクトはFinalCutのプリセットのものばかりだったが、今回Motionというアプリでこのエフェクトの初めて自作に挑戦してみた。
自作しようと思ったきっかけは「線画と実写の合成」 で作ったThink For Yourself。
線画はiPhoneのToonCameraというアプリで撮影したもの。これは動画作りを始めた頃から使ってるアプリでOb-LaDi Ob-LaDaとかYou Never Give Me Your MoneyとかPolythene PamとかThank You Girlとかで使ってきた。Think For Yourselfではこの「線画」にルミナンスキーヤーを当てて線以外を透過させてオリジナルの実写と合成。線画と実写を2フレームほどずらしてみたらちょっとおもしろい効果が出てきた。これを見ていたら「動く絵画」みたいなものが作れるかもと思い立ち、Michelleで本格的にやってみることにした。
「動く絵画」にするために必要な要素は2つ。
ひとつは中間色のグラディエーションを無くすために色数を減らすこと。こうすると「絵の具の塗り分け」っぽい画になる。
もうひとつはフレームレートを落とすこと。こうするとちょっとカクカクした動きになるのだが、これがパラパラまんがっぽい雰囲気になってなかなか良い。
ところがFinalCutにはこういうエフェクトはプリセットにはないのでMotionというアプリを使って自分なりに作ってみることにした。このアプリ、随分前に買っていたんだけど全然使いこなせなくて放置してた。ようやく出番。お金出して買ったんだからちゃんと使わなくちゃダメじゃん(笑)。
ポスタライズとストロボの効果を使ってエフェクトを自作。FinalCutにエクスポートして画面見ながらパラーメーター調整して・・・。
そんなわけで、Michelleのビデオは僕にとってはちょっとした挑戦だった。
RUBBER SOULに続くアルバムは凝ったアレンジの曲だらけだからイマジネーションを膨らませないと退屈なビデオになってしまう。少しでも編集の技を磨かねば。
新たな発見
今回の製作過程で気が付いたこと一覧。
僕なりの解釈なので、違うところはあるかもしれないけど。
- Drive My Carのリードギターは間奏の最後の2小節とアウトロでボトルネックを使ってるようだ。
- Norwegian Woodのアコギは若干スイング気味。
- You Won’t See Meにオルガンが入っているらしい。
- Nowhere Manで随所に入るEオブリガードは1発目だけE9。
- Think for Yourselfのドラムは3バース目の冒頭で直前のBメロパターンを1小節だけオーバーランしてる。この部分はタンバリンも抜いてる。
- The Wordの最後に突然登場するのはオルガンじゃなくてハーモニウムらしい。
- Michelleのアコギは2本。メインのリフは微妙に違うことやってる。
- Grilのアコギ、2本のうち1本は12弦か?とも思ったんだけど8Fカポで弾いた。どのみち持ってないし。
- I’m Looking Throuh Youのフェードアウトの直前にリードギターがソロっぽいフレーズを入れてる。
- In My Lifeは後半でリードギターがメロディーをなぞるフレーズを入れてる。
- Waitは普通のアタックのリズムギターが入ってる。
- If I Needed Someoneのバッキングで16分アルペジオっぽい箇所があるけどアルペジオというよりラフに低音弦→高音弦を交互に弾く感じ。
- Run For Your Lifeのバッキングで「ギュワーン」って鳴るギター。シンコーのスコアには「ボトルネック」って書いてあるけど使ってないと思う。