Hey Jude – The Beatles

SINGLE COLLECTION,The Beatles

composed by John Lennon & Paul McCartney ©1968 Northern Songs Ltd.
 

ジュード
落ち込まないで
悲しい曲も
明るく歌ってしまうんだ
彼女を受け入れごらん
そうすれば
だんだん良くなっていくよ

 

1968年に発売されたビートルズ18枚目のオリジナル・シングルのA面(B面は「レボリューション」)。クレジットはLennon – McCartneyだが実質的にはポール・マッカートニーの作品である。ビートルズが設立した会社・アップルからリリースされた最初のシングル盤で、彼らにとって最大のヒット曲になった。

当時一般的だった曲のおよそ倍の7分以上もある長い曲で、ラジオは3分以上の曲は放送しない建前だったがビートルズは例外だった。
曲の半分以上は後半の"na na na, na na na na, Hey Jude"の合唱が占めており、この部分にはメンバーの他にこのリフレインを演奏した35名のオーケストラメンバーも参加している。セッションに呼ばれたオーケストラのメンバーは36名。エンディングのオーバーダビングのための演奏を終えた後にビートルズ側から急遽「最後の"na na na"を手拍子しながら歌ってほしい」と依頼があった。35人は引き受けたが、1人だけはそれを断って帰ってしまったんだそうだ。

レコーディングセッションはアルバムTHE BEATLES (White Album)と同時期。
この時期には新たに8トラックのレコーダーが納品されていた。ビートルズの面々はこれを使うことを希望したが、EMIのアビーロードスタジオではまだこれを使うことができず、仕方がないので彼らは場所を独立系のトライデントスタジオに移動してレコーディングを行なった。
しかしトライデントはアビーロードと機材の規格が全く違っており、トライデントでミックスしたテープをアビーロードでプレイバックすると高音域がほとんど死んでいることが判明。幸いイコライジング処理で体裁を整えることができるレベルだったために再録音はせずに済んだ。
この後ビートルズ側が強硬に申し入れたため、結果的にはアビーロード・スタジオでの8トラック使用開始の時期が早められた。


ジョン・レノンと当時の妻・シンシアの破局が決定的になった頃、ジョンの息子ジュリアン(当時5歳)を励ますためにジョンの家に車で向かっていたポールが車中で"Hey Jules (ジュリアンの愛称)"と呟いたことからこの曲ができあがった。子供好きのポールは以前からジュリアンと仲がよく、両親の仲違いに心を痛めているであろう彼のことをとても心配していた。

ところがこの曲の主旨についてジョンは別の解釈をしていた。
「これは僕に向けての歌じゃないかな。"Now and get her"は『僕ら(ビートルズ)と離れて彼女(オノ・ヨーコ)の所に行きなよ』というポールからのメッセージだね」
当時ジョンはヨーコに心酔しており、同時にバンドへの情熱を失いかけていた時期だった。そんな自分と違って相変わらず創作意欲が旺盛でバンドの中心になりつつあったポールへの負い目があったのかもしれない。
そう解釈する一方で、「(当時ポールと交際していた)ジェーン・アッシャーから婚約を一方的に破棄された彼が、彼自身のことを歌った歌かも」とも言っていた。
しかしポールはあくまで「ジュリアンを励ますための歌だよ」と言い、ジョンの解釈を否定している。

元々"Jules"だった名前を「響きが悪いから」という理由で"Jude"に変更したポールだったが、この言葉がドイツ語で「ユダヤ人」を意味することを知らなかった彼は宣伝のためにアップル・ブティックの窓ガラスに"Hey Jude"と自ら大書してしまった。これが反ユダヤ主義の落書きと勘違いされて窓ガラスは割られアップルには抗議の電話がかかってくる事態となった。

曲の骨子ができあがった時、ポールはジョンにこの曲を披露した。
“The movement you need is on your shoulder"
の部分に差し掛かった時ポールは「ここは後で変えるから」と注釈を入れた。"shoulder"という言い回しがありきたりすぎると思ったからだ。
ところがジョンは
「なんだって?ここがこの曲で一番いい詩じゃないか。そのまま残せよ」
この一言でポールの迷いは消え失せた。

「不思議なもんで、自分が書いてた時は一番違和感がある箇所だったのに、ジョンに『ここが一番いい』言ってもらってからは一番好きになったよ。今でもあの部分を歌うとジョンを思い出すんだ」
後年になってもポールは好んでこのエピソードを持ち出す。
ジョンもビートルズ解散後この曲について
「歌詞は立派なもんだ。ポールも頑張ればいい詩を書けるってことだね」
とコメントしていた。

リハーサル中、リンゴ・スターがトイレにいくために席を離れていたが、他のメンバーはそれに気づかずに演奏をスタートさせた。リンゴが曲の途中に戻ってきて叩き始めたところポールが「このドラムの入り方はいける!」と感じて最終テイクもあのタイミングでドラムを入れることにした。

最終テイクで"Remember to let her under your skin" と “Then you’ll begin to make it better" の間に “Fucking hell !!"(クソったれ!!)と悪態をつくポールの声がかすかに聴こえる。
「ポールがピアノをミスって、使っちゃいけない言葉を使ってしまったんだ。でも俺はそのままにしとけって言い張った。ギリギリで聞こえるか聞こえないかの音量だし、たいていの人は気づかないんじゃないかな」(ジョン)

と、ここまでこの曲にまつわるジョンとリンゴの話は名曲の誕生秘話に相応しい楽しいエピソードなのだが、これに反して全く楽しくない話もある。

初期テイクではジョージ・ハリスンはギターを弾いていた。歌の合間にギターでオブリガードを入れるジョージにポールがイライラし、ジョージに向かって「ギターのリフを入れるのをやめてくれないか」と言い放つ。ジョージは特に歯向かいもせずに弾くのをやめて、ギターを置いた。
バンドでアレンジを練る過程ではこのくらいのことはあり得ることだし、ジョージはカチンとはきたものの慣れっこでさほど気にしなかったのかもしれない。
しかしポールはこの顛末をゲット・バック・セッションのTwo Of Usでのセッション中に蒸し返したり、ジョージの死後に製作されたドキュメンタリー映画LIVING IN THE MATERIAL WORLDでも思い出として語っていたほど印象的な記憶だったようだ。彼にとっては「ギタリストとしてジョージを信頼できない」という思いが不本意ながらも強くなるきっかけになった出来事だったのかもしれない。

1996年にロンドンで「ヘイ・ジュード」のレコーディング用楽譜類譜がオークションに出された際、ジュリアンが2万5千ポンドで落札した。


John Lennon (1968)
Well, when Paul first sang 'Hey Jude’ to me… or played me the little tape he’d made of it… I took it very personally. 'Ah, it’s me,’ I said, 'It’s me.’ He says, 'No, it’s me.’ I said, 'Check. We’re going through the same bit.’ So we all are. Whoever is going through a bit with us is going through it, that’s the groove.
 
ポールが初めて「ヘイ・ジュード」を僕に歌って聞かせた時…直接だったかデモテープか何かだったか忘れたけど、とても個人的な曲に思えた。「ああ、僕のか」って言ったら彼は「いや、僕だよ」って。でも僕はそうは思えなかった。で、「じゃぁお互いが思うようにやろう」ってことになったんだ。

John Lennon (1972)
That’s his best song.
 
彼が書いた最高の曲だ。

Paul McCartney (1974)
I remember I played it to John and Yoko, and I was saying, 'These words won’t be on the finished version.’ Some of the words were: 'The movement you need is on your shoulder,’ and John was saying, 'It’s great!’ I’m saying, 'It’s crazy, it doesn’t make any sense at all.’ He’s saying, 'Sure it does, it’s great.’
 
ジョンとヨーコに聞かせながら「歌詞はまだできあがってないんだ」って言った。"The movement you need is on your shoulder"の部分がね。でもジョンは「最高じゃないか!」って。僕は「バカな。全然しっくりこないんだよ」って答えた。でも彼は「意味はハッキリわかるよ。最高だ」って。

John Lennon (1980)
He said it was written about Julian. He knew I was splitting with Cyn and leaving Julian then. He was driving to see Julian to say hello. He had been like an uncle. And he came up with 'Hey Jude.’ But I always heard it as a song to me. Now I’m sounding like one of those fans reading things into it… Think about it: Yoko had just come into the picture. He is saying. 'Hey, Jude’– 'Hey, John.’ Subconsciously, he was saying, 'Go ahead, leave me.’ On a conscious level, he didn’t want me to go ahead. The angel in him was saying, 'Bless you.’ The devil in him didn’t like it at all, because he didn’t want to lose his partner.
 
彼はこれはジュリアンのことを歌った曲だと言った。僕がシンシアと別れでジュリアンを置き去りにしてしまったことを知って、ジュリアンのことが気がかりで車で家に来たのさ。彼はジュリアンにとってはずっと叔父のような存在でね。その車で「ヘイ・ジュード」を思いついたんだって言ってた。でもこの曲を聞くと、僕はいつも…ファンが僕らの歌の裏の意味を探るような感じで、こう解釈しちゃうんだ。僕がヨーコと出会ったことで…「ジョン、僕らを置いて行っちまえよ」っていう彼からのメッセージだってね。でも実際は彼は僕にそうなって欲しくはなかったはずさ。彼の心の中の天使が僕とヨーコを祝福した、と同時に彼の中の悪魔はそれを呪ってた。パートナーを失いたくなかっただろうからね。

Paul McCartney (1985)
I remember on 'Hey Jude’ telling George not to play guitar. He wanted to do echo riffs after the vocal phrases, which I didn’t think was appropriate. He didn’t see it like that, and it was a bit of a number for me to have to 'dare’ to tell George Harrison– who’s one of the greats– not to play. It was like an insult. But that’s how we did alot of our stuff.
 
「ヘイ・ジュード」でジョージに「ギターを弾くな」って言ったのを覚えてる。彼はボーカルの後にギターでリフを入れたんだけど、僕には良いと思えなかった。ジョージのような偉大なギタリストにこんなことを言うのはとても憚られたんだけど…「弾かないでくれ」って言ったんだ。侮辱したみたいになっちゃったけど、僕らの間では普通にあったことさ。

Paul McCartney (1994)
There is an amusing story about recording it… Ringo walked out to go to the toilet and I hadn’t noticed. The toilet was only a few yards from his drum booth, but he’d gone past my back and I still thought he was in his drum booth. I started what was the actual take– and 'Hey Jude’ goes on for hours before the drums come in– and while I was doing it I suddenly felt Ringo tiptoeing past my back rather quickly, trying to get to his drums. And just as he got to his drums, boom boom boom, his timing was absolutely impeccable.
 
面白いエピソードがある。リンゴがトイレに行ってったんだけど、僕はそれに気づかなかった。トイレは彼のドラムブースの奥だったから見えなかったんだ。僕は演奏を始めた。リンゴが急いで戻ってきて、あのタイミングでドラムを入れたんだ。まさに完璧なタイミングだったよ。

My Recording Data

Environment

HostApple iMac MC509J/A
ApplicationApple Logic Pro 10.1
Audio I/FRoland UA-55
 

Tr.1 :: Drums

  • KONTAKT 5 – ABBEY ROAD 60S DRUMMER
  • Channel EQ > Space D > Limiter

 

Tr.2 :: Hand Clap

  • KONTAKT 5 – ABBEY ROAD 60S DRUMMER
  • Channel EQ > Limiter
  • エンディングのハンドクラップ。Tr.1と同じセットなんだが同じトラックに配置するとスネアの音との分離が悪くなってしまったので別トラックへ

 

Tr.3 :: Piano

  • exs24 Steinway Piano 2
  • Channel EQ > Exciter > Space D

 

Tr.4 :: Bass

  • FGN NCJB-10R (front 10 rear 10 tone 1/4)
  • Guitar Rig > Multipressor > Channel EQ > Limiter

 

Tr.5 :: Guitar

  • YAMAHA FG-520 TBS
  • Channel EQ > Exciter > Limiter > ADT
  • ちょっとキンキンした感じの音

 

Tr.6 :: E.Piano

  • Vintage Electric Piano (Logic)
  • Space D

 

Tr.7 :: Tambourine

  • Tambourine (Headless)
  • Limiter > Channel EQ > Space D

 

Tr.8 :: Strings

  • KONTAKT 5 – Strings Ensemble
  • Channel EQ

 

Tr.9 :: Brass

  • KONTAKT 5 – Brass Ensemble
  • Channel EQ > Exciter > Sample Delay

 

Tr.10 :: Chorus 1

  • Channel EQ > Compressor > Modulation Delay > Space D
  • メイン部分3声のトップ&エンディング

 

Tr.11 :: Chorus 2

  • Channel EQ > Compressor > Modulation Delay > Space D
  • メイン部分3声のミドル&エンディング

 

Tr.12 :: Chorus 3

  • Channel EQ > Compressor > Modulation Delay > Space D
  • メイン部分3声のボトム&エンディング

 

Tr.13 :: Na Na Na 1

  • 平出真千夫さん
  • Compressor > Sample Delay > Space D

 

Tr.14 :: Na Na Na 2

  • 山中久美子さん
  • Compressor > Sample Delay > Space D

 

Tr.15 :: Na Na Na 3

  • 坂田毅さん
  • Compressor > Sample Delay > Space D

 

Tr.16 :: Na Na Na 4

  • 鈴木千晴さん、赤堀大さん、天野高弘さん
  • Compressor > Sample Delay > Space D
  • バンドのスタジオ練習の休憩中に歌ってもらった。僕の声も少し入ってる。

 


History

2015.03.01: version 2.0
2004.06.29: version 1.0

Diary


 


Sources