映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!
ゲームから生まれたキャラクター
飛ぶ鳥落とす勢い・向かうところ敵なし・泣く子も黙る「妖怪ウォッチ」。
もともとはLevel 5が製作したNintendo DS用のゲームで、その後テレビアニメ化された作品だ。
ゲーム(玩具)が母体で、後から他のメディアに展開されていくというのは昔は考えにくかった。
僕が子供の頃はテレビや漫画でヒットした作品のキャラクターを玩具に展開していくというのが普通だった。おまけ的な存在だった玩具の要素が存外商売になることを知った製作側は、以降キャラ物を「玩具にしやすいように」ということを念頭に置いて制作させることが多くなった気がする。
カード、超合金、プラモデル、ぬいぐるみ、フィギュア、ボードゲーム、文房具、変身ベルト。
そういうキャラ物が巷に溢れ子供らが熱狂したのが1970年代以降の流れだ。
当時は「テレビ」の影響力が大きかった。
一部で人気のある児童書も、漫画も、最終的に「キャラ物で商売」するためにはテレビという媒体で勝たなければならなかった。
短時間のうちに広範囲に影響を与えるテレビは「メディアの王様」。
とにかくテレビありき。
そんな時代だった。
時は移って1990年代。
家庭用ゲームの技術が進歩し、ゲームの世界にリアリティが出てきた。
ここでゲームを母体にしたキャラクターものが世に出て大ヒットした。
「ポケットモンスター」
僕はもう大人になっていたので全く興味がなかったのだが、子供たちの熱狂ぶりは凄まじかった。
ゲームという媒体がテレビが独占していた「広告塔としてのメディア」の牙城を崩した出来事だった。
その後20年以上の長きに渡って子供たちの人気者であり続けた「ポケモン」。
かつて熱狂した子供たちはもう大人になった。
そして彼らの子供たちもまた「ポケモン」が好きになっていく。
すると、親になった彼らは子供の「ポケモン道」にあれやこれやアドバイスというか、介入というか、干渉しはじめた。
「ポケモンはこうあるべきだ」みたいな。
かつて彼らが彼らの親から「ガンダム道」をクドクド説かれたのと同じように、だ。
これが子供にとっては鬱陶しいことこの上ない。
2014年に大ブレイクした「妖怪ウォッチ」は、そんな子供たちの新しいヒーローだった。
「妖怪」とはいえ決してオドロオドロしいものではなく、むしろ愛着のわくキャラクターたち。
覚えやすい名前、特徴的なデザイン、ドラえもんのひみつ道具のような様々な特殊能力。
そして何よりウザい大人が介入してこない。
「大人にはわからない、僕らだけの世界」
この価値観の共有が子供社会にとっては重要なのだ。
ホースを使え
小学5年生の少年・天野景太(ケータ)。
彼は『妖怪ウォッチ』という道具を使って普通の人には見えない妖怪を見ることができる。
妖怪が巻き起こす迷惑行為…妖怪執事ウィスパーが言うところの「妖怪不祥事案件」…を解決していく中で妖怪たちと心を通わせ、友達になる。
友達になった妖怪はその印として「妖怪メダル」というメダルをケータに差し出す。
この「メダル」を「ウォッチ」にセットするとその妖怪を呼び出せる。
彼の傍にはアドバイザー(というかただの賑やかしかも)としての妖怪執事・ウィスパーがついている。
地縛霊の「ジバニャン」はケータがいちばん仲の良い友達妖怪。
とまぁこの程度の予備知識があれば十分楽しめる映画だ。
知ったかブリブリですっちゃかめっちゃかなウィスパーに冷静なツッコミを入れるジバニャンの構図は盤石の安定ぶり。
ガッツ仮面のポーズは、あれはダメだ。何度見ても笑ってしまう。
ドラえもんやゲゲゲの鬼太郎を揶揄するシーンもあって、これは子供らにはわからないだろうなぁと思いながら笑ってしまう。
そして極めつけは最強の妖怪とされる「マスターニャーダ」。
小さい体、
全身ローブ、
眠そうな顔、
右手の杖、
そして本気出した時の異様な強さ。
誰が見てもスター・ウォーズのジェダイ・マスター「マスターヨーダ」だ。
しかも主人公大ピンチの場面で「ホースを使え」というセリフまで登場する徹底ぶり(スター・ウォーズでこのセリフを言うのはオビ=ワンなのだが細かいことは置いといて)。
「ホース?」というケータにウィスパーは「フォース」とわざわざ下唇を噛んで英語的発音で「フォース」の解説を始めたものの、出てきたものはただの「ホース」というオチ。あーもうたまらんです。
映画が始まってから劇場の子供たちと一緒に大笑いしながら見た。
最後のバトルでは妖怪たちが勢揃い!
個々の妖怪のシーンはちょっとずつなんだけど、知ってる妖怪が出てくる度に子供たちは大喜び。
ラストシーン、おばあちゃんのメガネについてるビー玉と、木の上で見ている妖怪(?)。
これにはちょっとジーンとしたなぁ。
ただ大騒ぎしてるだけじゃない。そういうバランスもすごくよかった。
くまモンはちょっと出すぎだったかな?
特典をめぐる争い
この映画、入場者先着500万人に限定メダル「ダークニャン」をプレゼント!という特典付きだった。
だから公開初日から大賑わいだった。多分全国的にそうだったんだろう。
今年「アナと雪の女王」に次いでヒットした「STAND BY ME ドラえもん」は公開から1ヶ月で530万人ほどだったので、500万個も用意してくれていれば普通は来場者のほぼ全員が手に入れられると思う。
が、問題は「転売屋」だ。
この映画の前売券発売時、やはり限定メダルの「フユニャン」を先着50万人にという特典があった。
まだ公開の半年前のことだ。
これに多くの人が殺到し、発売初日の午前中には全て掃けてしまった。
そして多くがネットオークションのサイトで異様な高値で売買されていた。
(ちなみにこの「メダル」は樹脂の単色成形品にシールを2枚貼っただけのものなので梱包材入れても製造原価は5円くらい)
転売屋が暗躍したのだ。
子供の玩具を大人が先回りして買い漁って、物欲しそうな子供に高い値段で売りつける。
最低の連中だ。
特典で客を惹きつけようという思想そのものは「グリコのおまけ」的に一般的なので製作側を責めるつもりはない。問題なのはそれに寄生してる転売屋。大人の世界でやるなら勝手にするがいい。子供を巻き込むな!
今回配布枚数を10倍に増やしたのはこの時の反省があってのことだと思う。
しかも「中学生以下に限定」という条件まで付けてくれた!
これなら見に来た子供全員に行き渡ると思う。
転売屋の入る余地はないし、入ってきたとしても欲しい子はみんな持ってる状態なので高値がつくこともない。
いいことだ。
息子は早く行きたがっていた。だから公開2日目に観に行った。
前売の騒乱を知ってる彼は「メダル?もう諦めてるからべつにいいよ」と口では言っていたけど、本心では欲しくてたまらなかったに違いない。
じゃなきゃこんなに早く行く必要もなかったんだし。
入場の時にメダルを貰った彼は、すごく嬉しそうだった。
映画も笑い、驚き、ハラハラし、ほんとに楽しんでた。
よかった。
うちにはDS無いからメダルの使い道はないんだけど。まぁ勲章みたいなもんだ。
ちなみにドラえもんは毎回なにかしらの特典(小さな玩具)が付いてくるが、これは「来場者全員」に配られる。
さすが。ドラえもんくらいの重鎮になると、もうモノで人を釣る必要もない。余裕綽々。
かけもち
主要人物は少ないのだが、とにかく妖怪が多い。だから多くの声優さんが役を掛け持ちしている。
5役くらいはザラなので、エンドクレジットはちょっと異様な感じだった。
興味があったので、帰りにパンフレットを購入。
「ケータのお父さんとクマとムリカベって同じ人がやってるの??」
「ボーノボーノとイケメン犬も同じなんだー!」
などなど、帰宅してからも息子と盛り上がった。
おかげでNHK大河ドラマ・軍師官兵衛の最終回を見逃してしまったよ。
録画してるからいいんだけど。
続編は?
あるらしい。2015年12月公開予定なんだそうだ。
ブームは続いてるかな?
公開されたらまた観に来よう!
この映画で、おくればせながら僕は妖怪ウォッチのファンになってしまったヨーダ。