宅録ビートルズ・2周目 – A HARD DAY’S NIGHT総括
2010年11月1日に着手して2011年1月10日に完成。
日数計算上は71日だが宅録日記ナンバーは038~049なので、録音に要した日数は12日ということになる…が、この頃の日記は実はかなり端折っていて、日々の記録というよりは曲が完成した時にまとめて書くというやり方をすることもあった。単にこまめに書くのがめんどくさかっただけなんだけど…だから実際はもう少し作業していたと思う。途中1ヶ月ほど全く作業しない期間もあったが、それを差っ引いたとしても12日で完成できたとは思えない。
2015年10~11月、動画製作のついでに10日間リミックス作業(一部パートの再録音を含む)をした。
仕上がったので、振り返り。
トラウマ
1周目の時も2周目の時もそうだったんだが、なんかこのアルバムのミキシングは苦手でうまくまとめられない。
原盤では前作WITH THE BEATLESまでのワイルド一辺倒な雰囲気が抜け、ちょっと洗練されたミックスになっている。グループの人気が上がったのでスタジオでの作業が入念になったのか、はたまた技術の進歩なのか、いずれにしても前2作よりも緻密な音作りをするようになってきた。ジョージが使い始めた12弦ギターもアンサンブルの変化に大きく影響した。
でも曲は相変わらずワイルドなものが多い。この辺のバランス取りが難しい。
いや、何も難しいことなんてないという人もたくさんいると思う。でも僕は2回挑戦して2回とも違和感を拭い去ることができなかったが故に妙な苦手意識がついてしまった。
動画化をするにあたっての再録・リミックスでもなんとなく不安というか、ちゃんとできるかどうか心配だったし正直自信がなかった。
でも始めてみたら今回はこれまでに比べると迷いがなかった。それなりにまとめることができたと思う。
12弦ギター
このアルバムからジョージ・ハリスンはリッケンバッカーの12弦ギターを使い始めた。
かなり特殊な楽器で、「ギター」とはいいながらも普通の6弦ギターで代用できるような音ではない。
ビートルズ全曲コピーしようと思ったら避けて通れないはずの12弦。でも僕は持ったことがなかった。
1周目の時も2周目の時も、12弦のパートはRoalndのV-Guitarに頼っていた。専用ピックアップをつければストラト、テレキャス、レスポールといった普通のギターのみならず、12弦、バンジョー、シタール、バイオリン、オルガン、ピアノ…と、ありとあらゆる音を鳴らせる夢のような機材だった。
2015年4月にとうとうホンモノの12弦を手に入れた。
Rickenbacker 360/12。
10月に始めた動画化のリミックスの時には12弦のパートは全てこいつで再録した。
V-Guitarのトラックとホンモノのトラックを聴き比べてみて、ミキシングに悩んでた理由がわかった。
V-Guitarの音はのっぺりしすぎているうえに素材そのものに変な残響音が入っていて音としては弱い。だからアンサンブルで沈んでしまうのだ。
これが全ての元凶…と言うつもりはないが、このアルバムのミキシングでいつも悩んでいた原因のひとつではあったような気がする。
ホンモノに勝るものはない。
が、やはり12弦は弾くのもメンテも大変。
弦交換なんて考えたくもない…けど避けられないよね。
映画を意識
A面は映画A HARD DAY’S NIGHTで使われた曲。音楽と映像は既にセットになっている。多くのファンの脳裏には劇中の演奏シーンが あるはずだ。
だから今回自分でビデオを作る時にはできるだけそのイメージに近くなるように画面構成を考えてみた。
I Should Have Known Betterは正面アングルでジョージの内股ステップをやってみたり。
If I Fellは歩きながら画面に入ってリンゴの隣に座って歌うジョンの動きを真似てみたり。
I’m Happy Just To Fance With Youはドラムを手前に置いてその向かいに3人というアングルにしてみたり
And I Love Herではポールをセンターに据えてその隣に片膝立てのジョージを置いたり。
という感じ。
自撮り&顔出ししないという制約の中でできるかぎりのことはやってみた。
さすがにCan’t Buy Me Loveで広場を走り回る画を撮るのは無理だったけどねー。
新たな発見
今回の製作過程で気が付いたこと一覧。
僕なりの解釈なので、違うところはあるかもしれないけど。
- A Hard Day’s Nightのオープニングのコードは諸説あれど基本的にはFadd9/Dでそれっぽい響きになる。ピアノがE3を鳴らすべきか否か迷ったが、入れた。
- I Should Have Known Betterのイントロのハーモニカはモノラル版とステレオ版で違っている。コピーしたのはモノラル版。
- I Should Have Known Betterの12弦白玉はあまり粘って弦をなめずにサクッと鳴らした方が良さそう。
- I Should Have Known Betterの間奏は4弦7Fからスタート。最後は1~3弦の12F実音。
- If I Fellのアルペジオ。AメロのEmはF#mの前がローポジションでF#mの後はハイポジション。
- I’m Happy Just To Dance With Youはジョンのカッティングが絶賛されるし確かにすごいんだけど、あの歯切れの良さは実はジョージのギターがツボでアクセントを踏んでるおかげだと思った。
- I’m Happy Just To Dance With Youのジョージのギターは映画的にはGibson J-160Eなんだけど僕のYAMAHA+Fishmanの組み合わせでは上手く音作りができなかったのでGretchで録音した。12弦はイントロのアクセント付けにオーバーダブしてる可能性があるけれどもメインパートでは弾いていないと思う。
- And I Love Herのリードギターは原曲では1テイクなのでテーマリフの後と間奏の後で1小節アルペジオが抜け落ちてる。ここはあえて原曲通りにやらず別トラックを用意してこの抜け落ちた1小節を拾うのが昔からの僕のやり方。
- Tell Me Whyのオープニング、2本のギターが違うコードを弾いてる気がする。1本がEm7→A、もう1本がG→A。
- Tell Me Whyはエンディングのブレークでどんどんテンポが上がっていく。バンドのノリなのかもしれないが宅録だと合わせにくい。
- Can’t Buy Me Loveのリードギターは12弦じゃなくて6弦のオーバーダブだと思う。
- Any Time At AllのリフはローコードのDsus4フォームじゃなくて4弦で弾いてる。オクターブ鳴らすのを狙ったんだと思う。
- Any Time At Allの間奏の導入部。2音目はピアノがF#鳴らしてるのでギターはDなのかと思ったらどうやらリードギターはG、リズムギターはBmを鳴らしてるようだ。ベースはAなので響きとしてはGmaj7/A…でいいのかな?
- I’ll Cry Insteadはクロマチックを外れてる。やや低め。
- I’ll Cry Insteadのリズムギター。シンコーのスコアだとAメロは1小節内でG→Cとなってるが実際はGだけだと思う。
- Things We SaidのエレクトリックギターはAmのところでAmとEmを交互に鳴らすが、1バースと2バース以降でパターンを変えてる。
- When I Get Homeのブリッジでのカッティングの譜割りはよくわからない。2本のギターが各々違うことやってる気がする。
- You Can’t Do Thatのギターリフ。ついついGフォームで始めてしまうのだが最初はM3ではなくm3(Bb : 3弦3F)を鳴らす。
- I’ll Be Backのスネアはストレイナーが緩めなのかな。スナッピーが薄い「カーン」といった響き。