Blackbird – The Beatles
闇夜に歌うブラックバード
その折れた翼で飛ぶことを学べ
生涯を通して
君はただ飛び立つ時を待っていた
闇夜に歌うブラックバード
そのくぼんだ瞳で見ることを知れ
生涯を通して
君はただひたすらに自由を望んでいた
ブラックバード飛んでゆけ
ブラックバード飛んでゆけ
夜の深い闇の中へ
闇夜に歌うブラックバード
その折れた翼で飛ぶことを学べ
生涯を通して
君はただ飛び立つ時を待っていた
君はただ飛び立つ時を待っていた
君はただ飛び立つ時を待っていた
About This Song
ビートルズが1968年にリリースしたアルバム「ザ・ビートルズ(通称『ホワイト・アルバム』)」の11曲目。クレジットはLennon – McCartneyだが実質的にはポール・マッカートニーの作品である。
インドに滞在中、同行していたドノバンが彼のスリーフィンガーアルペジオ奏法をビートルズの面々に教えた。これをきちんとマスターしたのはジョン・レノンだけだったが、この曲で裏拍に3弦開放音を鳴らすあたりはドノバンの奏法の片鱗を感じることができる。ポールはドノバンの奏法をまる写ししようするのではなく、これまでの自分のスタイルに部分的に取り入れただけということなのかもしれない。
作曲中にギターの1弦が切れておりレコーディングでも1弦は使用していないという説もあるが、実際には1弦もしっかり使っている。
鳥の鳴き声はアビー・ロード・スタジオのライブラリからのオーバーダブ。リズムトラックはポールが弾きながら足でリズムをとっている時に靴底がフローリングをタップしている音だと思う。
歌詞についてポールは「女性を『鳥』になぞらえて、黒人女性の人権擁護や解放について歌った内容」と言っている。
ベスト盤に入ることなどほとんどない地味な曲ではあるが、僕はこの曲に対する思い入れがとても強い。「ビートルズでいちばん好きな曲は?」と聞かれたら間違いなくこの曲を挙げると思う。
1984年の大晦日にNHK総合で放送された「ビートルズのすべて」というドキュメンタリー番組。アメリカのテレビ会社デライラ・フィルムが1982年に制作した"THE COMPLETE BEATLES"の日本語吹き替え版で、ナレーションが江守徹、ジョージ・マーチンのアテレコが柳生博…とまぁそれは別にいいんだけど、何気なく見ていたこの番組が僕とビートルズの本格的な出会いになった。
この番組を見るまで、僕にとって「ビートルズ」は小綺麗なマッシュルームカットと揃いのスーツで演奏する「作られたアイドルグループ」という印象しかなかった。しかしデビューの前に長い下積み時代があったこと、さらにこれほどまでに多種多様な曲を自分たちで作っていたことに心底驚かされた。「プリーズ・プリーズ・ミー」「抱きしめたい」「フロム・ミー・トゥー・ユー」「ア・ハード・デイズ・ナイト」「イエスタデイ」「愛こそはすべて」「イエロー・サブマリン」「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」…番組内で挿入される曲がタイトル付きで紹介されるたびにワクワクして聞いていた。聞いたことのある曲だらけだ。いったいなんなんだこのバンド。すごすぎる…。2時間の番組が終わる頃には完全にビートルズに魅了されてしまった。
この番組のエンディングに使われていたのが「ブラックバード」だった。普通ビートルズの特番のエンディングとなると「レット・イット・ビー」「ジ・エンド」あたりが鉄板なのだが、物静かなこの曲が番組の最後に実にマッチしていて強烈に印象に残った。しかしこの曲だけは番組内で曲タイトルのテロップが出なかったのだ。曲名を知りたくて、貸しレコード屋で片っ端からレコードを借りて必死になって探した。探す過程で番組では使われなかった多くの曲を知ることになり、ますますのめり込んでいく。そしてホワイトアルバムのB面についにこの曲を見つけた。嬉しくて何度も何度も聴いた。
高校生になってからギターを始めて、最初に練習したのがこの曲だった。これが載っている弾き語りのスコアを見ながら、父が持っていたクラシックギターでそれはもう一生懸命練習した。原曲通りの演奏を最初にマスターしたのはこの曲が初めてだった。左手で押さえる弦は多くても2本しかないから、右手の指使いさえ覚えてしまえば意外にあっさり弾けてしまう。弾けるようになるとますます好きになる。僕にとって最初の「十八番」で、思い起こせば高校の文化祭でこれを弾き語ったのが初めて人前で演奏したビートルズの曲だった。友人から借りた12弦ギターで弾いたっけ。12弦だったおかげでギター1本でもそれなりに綺羅びやかに鳴らすことができた記憶がある。
最初に覚えた時のスコア(TAB譜)は1弦を頻繁に使うように書かれており、運指は比較的楽だった。その後「1弦使ってない説」を知ってから1弦を使わない奏法で覚え直したのだが、さらに数年後にYouTubeで1968年にポールがスタジオでレコーディングのリハーサルをしている場面の動画を見て彼が実際どう弾いていたのかがわかり、再度覚え直した。ちゃんと1弦も使って弾いていた。
It’s simple in concept because you couldn’t think of anything else to put on it. Maybe on 'Pepper’ we would have sort of worked on it until we could find some way to put violins or trumpets in there. But I don’t think it needs it, this one. You know, it’s just… There’s nothing to the song. It is just one of those 'pick it and sing it’ and that’s it. The only point where we were thinking of putting anything on it is where it comes back in the end…. sort of stops and comes back in… but instead of putting any backing on it, we put a blackbird on it. So there’s a blackbird singing at the very end. And somebody said it was a thrush, but I think it’s a blackbird!
コンセプトとしてはすごくシンプルだから余計な詮索はできないはずさ。「ペパー」の時には曲に後からバイオリンとかトランペットを加えることができるようになってたからこの曲にも何か後処理をしたかもしれない。でも僕はこの曲にはそんなものは不要だと思ったんだ。何も必要ない。ただ「ちょっと歌ってみた」だけでいいんだってね。ちょっと工夫したとすれば一旦終わったような雰囲気の後にまた戻ってくるところ…かな。そこには鳥の鳴き声を加えたよ。曲の終わりまでブラックバードも一緒に歌ってるんだ。これが「ツグミ」だっていう人もいたけどこれは「クロウタドリ」だと思うよ。
Paul McCartney (1968)
Recording Data
Apple iMac MC509J/A
Apple Logic Pro 9.1.7
Native Instruments Roland UA-55
Tr.1 :: Guitar
- YAMAHA FG-520 TBS
- Compressor > Chan EQ > ADT
- Score / TAB
Tr.2 :: Stamping
- Tapping wooden floor by my shoe
- Chan EQ
- 革靴で自宅のフローリングを踏んだ音。
Tr.3 :: Humming Bird
- Singing Europian Blackbird
- YouTubeで見つけたクロウタドリ (Turdus merula, Europian blackbird)の鳴き声を拝借。4ファイル合計20分くらいの長さのリージョンからなるべく原曲の雰囲気に近いものを選んだつもり。
History
2020.05.06: 動画クリップ差し替え
2013.04.11: version 2.0
2005.08.28: version 1.1
2003.07.09: version 1.0
Diary
- 宅録ビートルズ・2周目 – THE BEATLES (White Album)総括 (2013/11/24)
- Blackbird – The Beatles (2013/04/11)
- 宅録ビートルズ・2周目 168 (2013/04/11)
Source
- http://www.beatlesinterviews.org/http://www.beatlesinterviews.org/Wikipedia English, 日本語
- Beatles Interviews Database