Nineteen Hundred And Eighty Five 【西暦1985年】 – Paul McCartney & Wings

2020/09/10eXtra

composed by Paul & Linda McCartney
© 1973 MPL Communications Inc.

『1985年にはもう誰も生き残っていないわよ』
彼女の言う通りかもしれない
彼女は賢い人だし
あらゆる愛を手に入れるだろう
でも僕の心には入り込めない
だって僕には君がいるから
そう、僕には…
どんな甘い誘惑も通用しないさ
かわいいあの娘がいつも一緒だから

ママが言ってたんだ
君を愛している自分に気付く日がくるって
考えたこともなかったし
夢にも思わなかったよ
でもすべてがその通りになったんだ
そして、僕は…
もうどんな誘いにも惑わされない
かわいいあの娘がいつも一緒だから

『1985年にはもう誰も生き残っていないわ』
ああその通りかもしれない
頭のいい人なんだろうし
愛なんてお手軽なもんでしょ
でも僕には関係ない
だって僕には君がいるんだから
そう、僕には…
どんな甘い誘惑も通用しない
かわいいあの娘は置いてきた

ポール・マッカートニー＆ウィングスが1973年にリリースしたアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」のラストナンバー。

ピアノのイントロからスタートしてシンセのスイープ音をフィーチャーしたメインテーマに入る。ポールのボーカルはやや鼻にかかったシャウトという感じで他ではあまり聴かれない歌い方だ。メインテーマからテンポはそのまま平行短調のルート音を起点にしたブルージーなパートへと移る。16ビートを意識したピアノと伸びやかなオルガンの絶妙なコンビネーション。その後の美しいコーラスとオルガンのブレークでひと息ついたのもつかの間、再びテンポが上がってメインテーマへ戻される。最後はギター、ストリングス、ブラスが加わっての壮大なエンディング。そしてコンセプトアルバムとして名高いビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のラストナンバー「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の最後を彷彿とさせるフォルテシモでこの曲は終わる。わずか3つのパターンしか持たない曲の中で、変幻自在にキャラを変えながら聴き手のテンションをどんどん上げていく。ポールの高いアレンジ能力が存分に発揮された曲だ。

アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」を聴いたのは、これは全くの偶然なんだけど、1985年だった。
アルバム最後のこの曲で『1985年には誰も生き残っていない』という歌詞を聴いてなんとも不思議な感覚になった。
そうか。ポールがこの歌を作った時は1985年なんてちょっとした『未来』だったんだな…。
僕にとっての「1985年」は…