宅録ビートルズ・2周目 – THE BEATLES (White Album)総括
2013年1月7日に着手して11月20日に完成。ほぼ1年を費やした。
日数計算上は317日。宅録日記ナンバーは143~222なので、録音に要した日数は80日。
収録曲が30曲と数が多いので時間は掛かるだろうと思ってはいた。
今年はライブも結構たくさんやってたので、その合間を縫いつつ…でよく1年で終わったとも思う。
会社員なので平日は普通に仕事してるし、帰宅してからも子供の勉強に付き合って風呂に入れて寝かしつけして。
宅録のための時間が取れるのは子供が寝てからなので長くても2時間程度しかない。
コツコツコツコツやってきた結果が積み重なっていくのは楽しい。
アルバムが仕上がったので振り返り。
バンドサウンド
彼らがライブパフォーマンスから退いてスタジオに篭って仕事をするようになったREVOLVERから前作MAGICAL MYSTERY TOURまでの曲は奇抜な楽器や凝った編集でもはやライブでは再現不可能なものが多かった。しかしこのアルバムでは「バンドっぽい音」が戻ってきている。
楽器編成が複雑だとミキシングも難しくなるんだけど、こういう「バンドサウンド」ならまだ僕のような素人でもなんとか扱える。気がする。
これまでの複雑奇怪な楽曲から解き放たれた開放感、とでもいうんだろうか。そういう気楽さもあるせいかちょっとノリの良いミックスになってる。気がする。
思い返してみると1周目の時もこのアルバムからガラリと音質が変わっていた。
SGT.PEPPERやMAGICAL MYSTERY TOURの製作が経験値を上げてくれていたのかもしれない。
そして今回は「音」以上に大きな変化があった。
「動画製作」に本腰を入れ始め、「音+映像」のセットでコンテンツを作り始めたのだ。
動画製作
「音と映像をセットにしてコンテンツを作る」ということは、実は2年前に作っていたREVOLVERの時から始めていた。
映像、といってもREVOLVERの時は各曲ごとに設定ている画像ファイルをゆっくりパンさせてただけ。
Google+とFacebookに投稿したが、手間が掛かっていないからか特に思い入れもなかった。
SGT. PEPPERでは、静止画像の代わりにiTunesのビジュアライザを録画してこれに曲を当てた。
ビジュアライザなので自分で工夫した箇所はほぼ皆無だったのだけれども、画面に動きが出てちょっと楽しくなったので、このアルバムからYouTubeに投稿し始めた。
MAGICAL MYSTERY TOURの2曲目、The Fool On The Hillで歌詞のテロップを入れたらどうだろうと思い立ち、やってみたらこれがなかなかいい感じだった。
画像はiTunesのビジュアライザから静止画像に戻したが、iMovieのエフェクトをあれこれ使ってできる限り動きを持たせてみた。このアルバムでiMovieの使い方をかなり習得した。
そしてこのWHITE ALBUM。
SGT. PEPPERやMAGICAL MYSTERY TOURと違って、このアルバムはバンド楽器が前面に出てる曲が多かったので演奏している画を当てて動画を作ってみることにした。これまでに比べると格段に手間が掛かりそうだったけど、「面白そうだからやってみたい」という気持ちが勝った。
で、録音作業と同時に撮影も始めた。
使ったカメラはiphone。これをスタンドに固定して自分撮り。
最初はフロントカメラを使ってた。これは顔が写らないようアングルを調整するためだ。
ところがフロントカメラの解像度は640のSD仕様。これでは1080pのフルHD動画には適さないということに気が付いたのは6曲目のThe Continuing Story Of Bungalow Billが終わった後のこと。ちょっと残念だったけど、できちゃったものはしょうがないやと諦めて、わざわざさかのぼって再撮影するようなことはせず、次のWhle My Guitar Gently Weepsからバックカメラでの撮影に切り替えた。
なので、この曲を境に画質がちょっと変化してる。
なにせ狭い部屋の中での撮影なので、アングルはどうしてもワンパターンになっちゃう。それでも最終的な映像がワンパターンにならないように、そしてできるだけ曲のイメージに近くなるように、色々試しながら編集したつもり。
1曲目のBack In The U.S.S.R.はまだ手探りで気の利いた演出は全くできなかった。撮影したクリップをiMovieに取り込んでつなげただけ。
オープニングのインディ・ジョーンズ風のマップはiMovieのデフォルトテンプレートに助けられた。これだけでかなりいい雰囲気になった。
その後、曲を録音する都度新しいことに挑戦していった。思い通りにならないことも多かったけど、積み重ねることでだんだん経験値が上がっていったと思う。
2曲目のDear Prudenceでは透明度のパラメータいじっての2画面合成を試してみたり。
3曲目のGlass Onionは静止画を動かしてドラムの音に合わせてみたり。
4曲目のOb-La-Di Ob-La-Daはアニメ調のエフェクトを大胆に使ってみたり。
5曲目のWild Honey Pieでは4画面を合成してみた。これはiMovieではできないのでFinal Cutを使った。
6曲目のThe Continuing Story Of Bungalow Billで2画面合成した時、半分のサイズになったギターとベースの動画を見て素材の解像度が不足していたことにようやく気が付き。
7曲目のWhile My Guitar Gently WeepsでからフルHDでの撮影をはじめた。
この頃にはiMovieでの表現力に限界を感じるようになっており、製作のプラットフォームをFinal Cutに移行した。
これは僕の動画作りでちょっとしたターニングポイントだった。
基本はプリセットフィルター頼みなのであまり凝ったことはできない。それでも潤沢に用意されているので創作意欲をくすぐる。
この曲以降、Final Cutの豊富なフィルターと直感的な操作性のおかげで、だんだん頭の中のイメージコンテに近い動画を作れるようになっていった。
まだまだアプリケーションを完全に使いこなせてはいないけれども、それでも映像作りはとても楽しい。
僕の中に流れているアニメーション製作者だった両親の血が騒いでいるのかもしれない。
Rickenbacker 4001がサイケペイントしてあれば、もっとよかったかな。画的に(笑)。
最大の難関
「全曲制覇」を目指してるからもちろん「全曲」やるわけだが、その中に「難関」になる曲がいくつかある。
このアルバムの29曲目はその難関中の難関。
こんな曲、フルコピーしようなんて人はなかなかいないと思う。
でも避けて通れない。
その名は “Revolution 9“。
これ、「ミュージック・コンクレート」というジャンルの音楽で、楽器の演奏がほとんど無い。
いろんな音の断片の寄せ集めだ。
しかも曲が長い。8分以上ある。
実は1周目の時は最初の3分ほどで挫折し、途中からオリジナルの音源をクロスフェードさせるという超インチキをやっていた。
だから「完全制覇」じゃなかった。
でも今回は逃げたくない。絶対に最後までやり切る!
そんな意気込みだった。
でも始めてみると、やっぱり大変。
なんか「音楽作ってる」っていう気がしなくて。
ちょっとしたストレスになったので発散のために全然別の曲を録音してみたり。
作業間隔をあけてみたり。
適当に発散させながらなんとか最後までやりきった。
動画は自分で演奏した箇所が皆無なのでフリー素材の寄せ集め。
こんなの誰も見ないだろうと思ってYou Tubeに置いてみたら、意外に反応が多くてビックリ(笑)。視聴数もそこそこ伸びた。
完成度はともかく、インパクトだけはあったかも。
新たな発見
今回の製作過程で気が付いたこと一覧。
僕なりの解釈なので、違うところはあるかもしれないけど。
- Back In The U.S.S.R.のジェット機はずっと飛んでるわけじゃない。飛んでない時間のほうが長い。
- Ob-La-Di Ob-La-Daのベースとユニゾンになってるのはクリップしたアコースティックギター。しかしデジタルでクリップは禁じ手なのでオーバードライブのエフェクトを使った。
- Wild Honey Pieのリズムガイドはアコースティックギターのボディーを叩いた音。
- The Continuing Story Of Bungalow Billのオープニングのスパニッシュギターはメンバーの誰かが弾いてるんじゃなくてメロトロン(M200)のプリセット音なんだそうだ。鍵盤1つ押さえるとあのフレーズがかかる。
- The Continuing Story Of Bungalow Billの曲中のナイロンギターのトレモロのような音もメロトロン(M200)のプリセット音なんだそうだ。
- While My Guitar Gently Weepsのリードギターはレスリースピーカーを通した音にADTをかけてる。
- Happiness Is A Warm Gunのギターソロはチョーキングじゃなくてボトルネック使ったらいい感じで唸った。
- Martha My Dearのピアノ。若いころにマスターしたフレーズはオリジナルとちょっと違っていた。練習しなおし。
- Blackbirdの運指はYouTubeで見つけたリハーサル場面でのポールの弾き方をコピーした。
- PiggiesのキーはAbだがギターは1フレットにカポ入れてGで弾くとラク。
- Don’t Pass Me Byの終盤のブレークにギターの空ピックのような音が。
- Why Don’t We Do It In The Roadのオープニングのパーカッションはギターのボディーを叩いた音。
- Birthdayのタンバリンは少なくとも2トラック入ってる。
- Mother Nature’s Sonにティンパニーが。
- Everybody’s Got Somethig To Hide Except Me And My Monkeyのイントロギターカッティングは1つ目と2つ目は8分音符1個で音を切り3つ目は8分音符1.5個分くらいの長さでややのばすと聴き手を騙せる。
- Everybody’s Got Somethig To Hide Except Me And My Monkeyのベース。Aメロフレーズは頭の1拍目に強烈にアタックをかける。
- Helter Skelterはギターの間奏の手前で「プープー」って何かが鳴ってる音が聞こえる。
- Long Long Longのエンディングはボトルのカタカタ音にギターのミュートカッティングとドラムのスネアロールがだんだんかぶってくる。
- Long Long Longのラストのギターはミュートカッティングの後でピックスクラッチで弦を上昇し最後はカポ付近で全弦開放弦のカッティングで似た感じになる。
- Revolution 1のリズムギターはセーハフォームじゃなくて開放弦をラフに鳴らしたほうがそれっぽくなる気がした。
- Savoy Truffleのブラスセクションにはディストーションが掛かってる。
- Cry Baby Cryのギターはテープがよれてるような不思議な揺れ方をしてる。Tape Delayで再現してみた。
- Revolution 9はコツコツやるしかない。いつか終わる。
さて、お次は・・・
YELLOW SUBMARINEの4曲。
A面は6曲だけどうち2曲はリバイバルで既に録音済みなので。
あ、それとB面はやらないよー。