ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー

よもやま話,映画の話


昔々
遥か彼方の銀河系で…

 

禁断のスピンオフ

スター・ウォーズの本編である「エピソード 1~9」以外にそれを補完するいわゆる「スピンオフ」作品というのが結構たくさんある。小説、アニメ、映画…等々。この「ローグ・ワン」もそんなスピンオフのひとつだ。

僕はスター・ウォーズのシリーズは大好きなのだが、「スピンオフ」は意識的に避けてきた。
いや、「イウォーク・アドベンチャー」系の映画2作は観たか。
公開されたのは「ジェダイの復讐」の印象がまだ色濃く残ってた1985年。
2作ともそれはそれはひどい作品だった。
あと「スローン3部作」と呼ばれる小説もちょっとだけ読んだっけ。
これは第2デス・スターの破壊と皇帝の死から5年後の世界を描いた作品で、最初の3部作に登場したルーク、レイア、ハンが現役バリバリで活躍してる。発刊されたのは1991年。映画「ジェダイの復讐」のパンフレットに書かれていた「次はエピソード1~3を作る」というジョージ・ルーカスの宣言を信じていたのに待てど暮らせど全く次期シリーズの音沙汰が無くスター・ウォーズに飢えていた頃の作品だったので思わず手に取ってしまったのだ。
これもすごくつまらなかった。

僕がそれ以降スピンオフ作品を一切受け付けなくなったのはこれらの作品に対する極度の失望が原因だと思う。
そんな僕をこの「ローグ・ワン」に惹きつけたのは、予告編に登場した甲冑の暗黒騎士だった。
 

甲冑の暗黒騎士

もちろんダース・ベイダーのことだ。
ほんの数秒、こちらに歩いてくる姿と振り返る姿が映し出されただけだ。アクションはない。
画面にダース・ベイダーが登場すれば世界中のスター・ウォーズ・ファンはワクワクするに決まってる。そんなファン心理をくすぐるためだけのカットなのかもしれない。しかしこの作品の舞台設定が「エピソード4の10分前まで」となっている。それであれば彼が登場しないわけがない。

動く実写のダース・ベイダーが出るなら、観なくちゃダメだろ。

というわけで、暗黒面の誘惑に負けて「スピンオフには触れない」の禁を破ることにした。

ここからネタバレ満載で書きます。知りたくない人は読まないように。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

物語はエピソード4「新たなる希望」の冒頭で語られた「究極兵器デス・スターの完成」と「反乱軍による設計図強奪作戦」についての話。
主人公は「ジン・アーソ」。彼女の父・ゲイレンは有能な科学者でその能力故に帝国に拉致されデス・スター開発の中心的役割を担わされる。意に反して究極破壊兵器の開発に手を染める父が残そうとした微かな「希望」。その「希望」を娘が父から引き継ぎより確実な形で後世に託す…この物語の主軸は「希望」だ。

 

本編へのオマージュ

時代設定がエピソード4「新たなる希望」の直前なので、出てくるメカニックは懐かしいものだらけだ。
Xウィング、Yウィング、病院船、TIEファイター、AT-AT、AT-ST…。
そしてエピソード4の冒頭で追いかけっこをするスター・デストロイヤーとブロッケードランナー(タンティブIV)。

完璧だ。

メカニックだけではなく、キャラクターもそのものズバリが登場してた。
ジェダの雑踏でジンと肩がぶつかり「気をつけろ!」と怒鳴った男…これ「ドクター・エバサン」だ!そして彼の隣には「ポンダ・バーバ」!いきなりマニアックだがこのふたりは「エピソード4」でカンティーナの酒場でルークに因縁つけてオビワンに腕を切り落とされた「あちこちで死刑を宣告されてる」お尋ね者だ。
反乱軍の基地には「新たなる希望」で最初のデス・スターの破壊作戦のブリーフィングをしたジャン・ドドンナ将軍。「ジェダイの復讐」で第2デス・スター破壊作戦のブリーフィングをしたモン・モスマ。「シスの復讐」で生まれたばかりのレイアを引き取ったオルデラーンの評議員ベイル・オーガナ。
そしてR2-D2、C-3POの姿もあった。

反乱軍のパイロットでは「レッドリーダー」と「ゴールドリーダー」が再登場!これはCGではなく当時撮影されたフィルムの切り貼りのようだ。セリフもあの時のまんま。ウェッジは?ビックスは?ポーキンスは?…いたのかな?見つけられなかった。

帝国の基地にはこれまた懐かしい名前さえよくわからないドロイドがうじゃうじゃ。名前は知らないけど彼らが発する「音」にはイヤというほど聞き覚えがある。

そして後半にいよいよダース・ベイダーが登場する。
居を構えるのは火山の星…おそらく「シスの復讐」で最終決戦の場となったムスタファーに違いない。
声はもちろんジェームズ・アール・ジョーンズ。
そしてマスクの目は濃い紫色。
実はダース・ベイダーのマスクは作品ごとに微妙に異なっていて、この「濃い紫色の目」は「新たなる希望」で使われたマスクの特徴のひとつなのだ。

最後の空中戦では反乱軍のXウィング「レッド5」が撃墜されてしまうシーンがあった。「新たなる希望」でルークが乗る「レッド5」が欠番だった理由はこれだったのだ。地味だがわかるひとにはわかる、そんなシーンだ。

旧キャラクターの復活で特に驚愕したのはふたり。

ひとりは帝国の「グランド・モフ・ターキン」。
「新たなる希望」でターキンを演じたピーター・カッシングは1994年に亡くなっている。しかし…画面に現れたのはピーター・カッシングその人だった。
顔立ちだけはない。振る舞い、台詞回し、全てが「ターキン」なのだ。
度肝を抜かれた。
ピーター・カッシングに似た俳優とCGを合成したんだそうで。それにしてもすごかった。登場シーンも多い。出てくる度にドキドキした。

もうひとりは反乱軍の「レイア・オーガナ姫」。
レイアを演じたキャリー・フィッシャーはつい先日亡くなってしまった。突然のことでビックリしたし、とても悲しかった。
もちろん「ローグ・ワン」の撮影中は存命だったが、老齢の彼女を40年前に戻すのはさすがに無理がある。レイアを演じたのはキャリー・フィッシャーによく似た若い女優さんなんだそうだ。顔が出てくるのは1カット。
そしてこの時のレイアの最後のセリフがこの映画の全てだったんじゃなかろうか。
 

最後の最後が鳥肌モノ

帝国の基地から受信したデス・スターの設計図のデータを持って逃げようとする反乱軍からデータを取り戻すためにダース・ベイダーが単身で反乱軍の船に乗り込んでくるシーンがおそらくこの映画の最大かつ最高の見せ場だ。

暗闇の中、あの不気味な呼吸音と共に彼の真っ赤なライトセーバーが点灯された瞬間、ゾクゾクきた。
そしてゆっくりと歩き出した彼はブラスターで猛攻撃してくる反乱軍の兵士を片っ端からなぎ倒していく。

強い。
相手が何人いようが物の数ではない。

ライトセーバーでブラスターを弾き返し、兵士を次々に殺しながら止まることなく迫ってくるダース・ベイダー。これほど強く、これほど恐ろしいダース・ベイダーを見るのは、場面にはそぐわない言い方だけどこの上ない喜びだった。
 

ちょっと残念だったこと

全般的に楽しめたけどちょっと残念なこともあった。

  • ジンの家で「ブルージュース」が出てきた。ファン用のサービスカットのつもりなんだろうけどあれってタトゥイーンのものじゃないの?
  • チアルートが「フォース」「フォース」ってうるさい。「フォース」を安売りしすぎ。
  • レイアのあの最後のセリフは満面の笑みじゃなくてもう少し深刻な表情で喋ってほしかった。
  • ヒーローのキャシアンが最後までリチャード・ソーンバーグ(ダイ・ハードのラストでホリーに殴られるテレビレポーター)に見えて仕方なかった。

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